今回は数理論理学の大家、A 先生の退官記念公演をたまたま聞く機会に恵まれました。
タイトルは『40年くらい』
A 先生の講演は非常に面白く、いかにこの記録をざっくりと残しておきたいと思います。
A 先生は学生時代に数学を志望した段階で、デデキントの本を読んだことがあったそうです。
その中に、次の定理があったそうです:
定理 66: 無限集合は存在する.
証明: 私の思考の世界, すなわち私の思考の対象となりうるあらゆる物事の全体
S は無限である.
A 先生はこの証明にのけぞって、こんなの数学じゃない、と、がっかりしたそうです。
時は絶って A 先生は数学基礎論と出会いました。
その中に、ゲンツェンによる自然数論の無矛盾性証明というものがあったそうです。
1981 年、A 先生は筑波に行ったのですが、その時のやりとりが、
筑波大の先生『基礎論をやるんだって?』
A先生『はい』
筑波大の先生『やめなさい。就職できないから。』
筑波大の先生によると、就職目的ならば、代数、幾何、解析の方がいいとのこと。
しかし、A 先生は諦めず、夏休みに
竹内外史先生の: proof theory.
を読もうとしました。
しかし、ここでも筑波大の先生からはやめなさいと言われたそうです。
これ、なぜかというと、竹内外史先生の proof theory は非常に難解で、
それだけで評判が悪かったからだそうです。
その後仕事の変遷や今の奥さんとの結婚など紆余曲折を経て、
A 先生は 2019年 に東大に戻りました。
そこで、Hilbert の第二問題というものがありました。
これはどういう問題かというと、
2階の自然数論 Z_2 の無矛盾性証明を与えよ。という問題です。
これは、『実数論の無矛盾性証明を直接, 与えよ』と同値です。
しかし、この無矛盾性証明は、有限の立場で、証明論にて行う必要がありました。
通称、ヒルベルト・プログラムと呼ばれるものです。
しかし、ゲーデルの第二不完全性定理により、ヒルベルト・プログラムは頓挫してしまいました。
ゲーデルの第二不完全性定理の主張することは、
『理論 T があった時、T 内で定式化できる方法では T の無矛盾性証明はできない』ということです。
しかし、ゲーデル以後、ゲンツェンによる自然数の無矛盾性証明が得られました。
これは、ε_0 までの順序数による 一階の自然数論の無矛盾性証明で、
有限の立場を拡張したものとみなされています。
しかし、これが本当に有限の立場と見做せるかどうかは、専門家によって、見解が分かれています。
ゲンツェンの仕事の後で、次の竹内の基本予想 (FC) が証明されました。
『2階のLK のカット消去定理が示せる。』
この予想が証明されたおかげで、実数論の無矛盾性が従います。
しかし、竹内先生の証明は非常に難しく、竹内先生の証明をわかりやすく書き換えることが大事でした。
しかも、そもそも、これは無矛盾性証明か?という疑念は常に付き纏います。
ここで、転回が訪れます。それは、K.シュッテ によるもので、
2階自然数論の部分体系を対象としていました。
ここから竹内の基本予想 (FC) の部分解がえられます。
つぎに、新井先生のご専門である、集合論の ordinal analysis について解説します。
Tを 公理系とし、T でその整列性が証明できる計算可能な『自然数上の』整列順序の順序型の上限を |T| と置きます。
この定義で、PA を一階の自然数論とすると、
|PA| = ε_0 (Gentzen)
が成り立ちます。
また、帰納的正則基数 (recursively regular cardinal )の集合論を対象とした集合論というのがあって、
シュッテの論文は、recursively inaccessible ordinal が対象となっていました。
この |T| の解析のためには、集合論の巨大基数の階梯を登っていけば良いです。
比較表は次のとおり:
cardinal : ordinal
regular : rec regular
WI cardinal : rec inaccsessible
weakly Mahlo : rec Mahlo
Π1_2 indescribable : Π_4 reflecting
Π^1_1^-indescribable = weakly compact : Π_3 reflecting
indescribable : first-order reflecting
まず、よく知られている結果として、無限公理は独立です。
正確には、
| ZFC -無限公理 | = ε_0
が成り立ちます。
ZFC – 冪集合公理 だと、非可算集合の存在が言えません。
遺伝的可算集合からなるモデルが存在するからです。
新井先生の結果としては、
|ZFC – 冪集合公理 | = ψΩ (I ω)
であり、
L_σ <_Σ_1 L
となるような順序数 σ が univeese L において
stationary にある、というものでした。
以下、新井先生に聞いたことですが、ZFC そのものの無矛盾性証明については、
非可算な部分を計算可能性順序数にどう落とし込むかの問題があり、
まだ全然できていないとのことでした。
しかし、冪集合公理抜きではうまく行っているとのこと。
また、10年以上前、膨大新聞社の数学者特集記事で、
新井先生が ZFC の無矛盾性証明に猛烈に取り組んでいるという記述があったが、
新井先生に確認したところ、そのようなことは話をしていないとのこと。
最後に、 |T| のあたりをつけるのは可能か?という質問があがったが、
これはケースバイケースで、T を深く調べる必要があるとのことでした。
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